米国で医薬品への歩みを
着実に進めるパン酵母抽出のベータ1・3Dグルカン

A・J・ラニガン



免疫細胞が通常より160%向上した


私は、これまでアメリカ・ルイビル大学のべトウィカ博士と共同で、 ベータグルカンの開発および、その作用についての研究に携わってきました。

ベータグルカンには、さまざまな種類がありますが、 アメリカでは大麦やカラス麦から取れるダイエット食品としてのベータ1・4Dグルカンが有名です。 しかし、私たちはパン酵母に注目しました。 パン酵母はほかの原料と比べて高い収率で ベータ1・3Dグルカンを抽出できるからです。

私たちは、すべての基礎的免疫反応について、 パン酵母抽出のベータ1・3Dグルカンと そのほかのベータグルカンとを並列に比較実験しました。

パン酵母抽出のベータ1・3Dグルカンは、 体重1kg当たり0.125mmgというわずかな投与量で、 免疫細胞の活性化が確認されました。 免疫細胞の活性度は、投与量に比例して著しく増加し、 パン酵母抽出のベータ1・3Dグルカンの投与で、免疫細胞は通常よりも160%向上したのです。

一方、ほかのベータグルカンは、体重1kg当たり2mmgまで投与して、 ようやく効果が確認される程度でした。

 このように、パン酵母抽出のベータ1・3Dグルカンは、その免疫活性作用について、きわめて優れているといえます。

現在、パン酵母由来のベータグルカンは、 サプリメントとしてだけではなく、医薬品としての承認を得るために、 アメリカ食品医薬品局(FDA)の基準に従って治験を行っています。
昨年の9月には、安全性と有効性に関する膨大な医療研究データを基に、 FDAから新薬申請用臨床試験(IND)の承認を与えられました。

人間を対象とした安全性の確保はクリア


現在は、第一段階(フェーズ1)で求められる、 人間を対象とした安全性の確保はクリアし、 ガンなどの特定の症状を抱える人を含めた、 より多くの人々を対象に治験投与を行う第二段階(フェーズ2)にあります。

そして、最終段階である第三段階(フェーズ3)の治験も、 2008年度中には完了し、その後、医薬品としての認可が得られる見込みです。

マウス (ネズミ) での実験では、 各抗ガン剤との併用によって、リンパ腫、乳ガン、大腸ガンなどの治療効果が、 従来の10~40%から約80%へと、劇的に向上しました。
従来の放射線治療や抗ガン剤治療は、 ガン細胞を死滅させると同時に、免疫機能を破壊し、 さまざまな副作用をもたらします。

しかし、ベータグルカンには、 こうした治療法とは逆に、免疫力をつかさどる白血球を増殖する作用があるのです。 こうしたメリットを持つベータグルカンが、医薬品として用いられる日も、 近い将来やってくるでしょう。